AfterShokz初のエントリーモデル骨伝導ヘッドホン「OpenMove」徹底レビュー
先月9月に発売になった骨伝導ヘッドホンの雄・AfterShokzの新型となる「OpenMove」。その実機サンプルをAfterShokz広報代理店のCyberMedia Communications Japan様より提供いただいたので、色々な使用方法と共に徹底レビューしていこうかと。
今回発売となった「OpenMove」最大の特徴は、AfterShokz初と言っても良い「エントリーモデル」に位置する骨伝導ヘッドホンであるということ。
これまでに数々の優れた骨伝導ヘッドホンを世に送り出し、当ブログでもこれまでに「AIR」や「Aeropex」などを紹介してきたが、そのどれもが高性能な製品であるだけに、お値段の方も非常に高価となっているのが難点だった。
Bluetooth5.0 IP55防水設計 連続再生時間:6時間 重量:29g
保証期間:2年間長期保証(※要代理店登録)
しかしながら今回発売された「OpenMove」は上位モデルのAeropexなどと同様のチップを搭載して音質面で同等の性能を維持しつつもコストダウンに成功し、1万円を切るという非常にリーズナブルな価格での提供に成功した、まさに骨伝導ヘッドホン入門機に相応しいモデルに仕上がっている。
OpenMove カタログスペック確認
まずはOpenMoveのカタログスペックを確認。
品番 | AS660 | 電池 | リチウムポリマーバッテリー |
Bluetooth Version | Ver.5.0 | バッテリー駆動時間 | 最大6時間 |
周波数特性 | 20Hz~20KHz | バッテリー待機時間 | 最大10日間 |
周波数帯域 | 2402MHz~2480MHz | 充電電圧 | 5.25V±5% |
スピーカー感度 | 96±3dB | 充電時間 | 約2時間 |
マイク感度 | -40dB~±3dB | バッテリー容量 | 135mAh |
インピーダンス | 8.0±0.5ohm | 防水規格 | IP55 |
無線通信距離 | 約10m(障害物無し) | サイズ | 136mm×196mm×67mm |
対応プロファイル | A2DP, AVRCP, HSP, HFP | 重量 | 29g |
充電タイプ | USB-C | 保証期間 | 2年間 |
Aeropexと同様のチップを搭載し、音質面では上位モデルと同等の性能を誇る点を強調しているOpenMoveだが、上記カタログスペック上でのAfterShokzの上位モデルとの相違点は以下の通りとなる。
Aeropex | OpenMove | |
スピーカー感度 | 105±3dB | 96±3dB |
マイク感度 | -38dB~±3dB | -40dB~±3dB |
バッテリー容量 | 145mAh | 135mAh |
バッテリー駆動時間 | 最大8時間 | 最大6時間 |
防水規格 | IP67 | IP55 |
サイズ | 135mm×169mm×94mm | 136mm×196mm×67mm |
重量 | 26g | 29g |
充電タイプ | マグネット式 | USB-C |
OpenMoveはAeropexと比較して防水規格やスピーカー・マイクの性能に加え、バッテリー面で差を付けることで低価格化を図っているのが分かる。
またサイズや重量面でも若干ながらAeropexの方が小型かつ軽量で、本体の素材面でもAeropexは全体がシリコンに覆われたチタニウムフレームなのに対し、OpenMoveはバンド部分のみがチタニウムフレームで、ユニットやアクチュエーター部分がプラスチック素材のハイブリッドで形成されているなど、随所に上位モデルとの違いが見える。
OpenMove開封&各種チェック
それではOpenMoveを開封。割と驚いたのが、OpenMoveは外箱からしてこれまでのAfterShokzの製品とはちょっと異なる感じだったこと。
OpenMoveの外箱は中身が見えるクリアケースタイプ。Aeropexを筆頭とするこれまでのAfterShokz製品は全てかなりガッチリとした構造の豪勢な作りの外箱だったので、外箱ひとつ見てもコストダウンにかなり力を入れているのが分かる。
しかし基本的なデザインはこれまでのAfterShokz製品のものを踏襲しており、裏側は基本的な特徴とスペックが一覧となっているのも同じ。
OpenMove本体。カラーはAfterShokz製品ではお馴染みの基本色とも言うべき「スレートグレー」。バンド部分のみがチタニウムでユニット部分はプラスチックだが、一見すると質感の違いはほぼ分からない。
曲の再生や停止、送りなど複数操作を担うOpenMoveのマルチボタンは、場所自体はAeropexなどと同様左側ユニット部だが、デザインと一体化してして目立たず、かつクリック感が良く押しやすい構造に。
振動を発生させて頭蓋骨に実際に音を伝導するアクチュエーター部分。上位モデルのAeropexなどよりもかなり大型だが、アクチュエーター部分の素材自体は一緒なので肌触りは良い。
ユニット部分のボタン類。電源ボタンを兼ねた音量ボタンに、充電用コネクタが並ぶ。
上位モデル充電コネクタは独自企画のマグネット式なのに対し、OpenMoveは汎用性の高いUSB-Cに。マグネット式はいちいちフタを外す必要が無くコネクタの着脱もカチッと簡単だが、外出先などでの充電はわざわざ専用のケーブルを持ち歩く必要があるという不便な面もあったため、USB-Cコネクタへの変更は嬉しいアップグレードポイントと感じる人も多いはず。
バンド部分のチタニウムフレームとユニット部分のプラ素材の接続箇所。本体全てがチタニウムフレーム&シリコンの上位モデルは一切の継ぎ目が無いが、OpenMoveはこのように極わずかにだが隙間があり、防水規格がIP55になっているのはそのためでもあると思われる。
実用上の防水規格はIP55もあれば十分だが、完全防塵&一定時間の耐水没性能を誇るIP67のAeropexには一歩譲るのは事実なので、ここら辺は自分の用途と相談して判断となる。
正直装着しながら風呂に入るなどの無茶な使い方をしない限り、IP67はオーバースペックではあるのだが……
付属品類。マニュアル類に充電用USB-Cケーブル、耳栓、そして持ち運び用のケース。ケースは防水加工されたそれなりにしっかりしたものだが、上位モデルのシリコン製&マグネットフラップのケースと比べるとここにもコストダウンの波を感じさせる……
OpenMove各シチュエーションでの試聴レビュー
それではOpenMove視聴レビュー。まずはこれまでにTrekz Air、Aeropexと接続して使い続けている愛用の携帯音楽プレーヤー、Sony NW-A26HNから。
Sony WALKMAN NW-A26HNの試聴では、上位モデルと変わりない性能を感じさせる
NW-A26HNのBluetoothはVer.3.0、OpenMoveはVer.5.0だが、今回も問題無くペアリング可能。接続は標準的なSBCコーデックにて。
結論から言うと、音質面での感想は可も不可も無く、特に無し。しかし1万円を切るエントリーモデルの価格帯でありながら上位モデルのAeropexと比較しての感想が「可も不可も無く」と考えれば、これはかなり凄いこと。
Aeropexと同じQualcomm QCC3024チップ搭載というのは伊達ではなかったようで、携帯音楽プレーヤーで試聴するなら、音質面では上位モデルとほぼ差は感じられないと判断できる。
厳密に言うとAeropexの方が多少音が柔らかいと言うか熟れた感があるが、これはAeropexを長く使用していることによる感覚誤差程度のことかと。基本スピーカーやヘッドホンなどのエイジング効果はあんまり信じないタチなんで……(やってないとは言ってないw)
Sony Xperia XZ3で音楽試聴&LINE通話でマイク性能を試す
お次はスマホのXperia XZ3での音楽試聴と、マイクを使用しての通話を試してみる。
音楽試聴に関してはごく普通にクリアな音声で試聴できる。使用しているのが同じSony製品なので当然と言えば当然だが、NW-A26HNでの試聴との違いが判別できない……上位モデルのAeropexと比較しても遜色ない音楽再生能力がスマホでも証明された。
また、ちょうど良く友人達とLINEで通話する機会が重なったので、OpenMoveでの通話を試してみた。マイク感度についてはAeropexよりもスペック上は若干劣るが体感できるほどの性能差は一切感じられず、何の問題も無く通話可能だった。
ただマイクの位置からか、周囲の雑音をそれなりに拾ってしまうのは相変わらずだったので、コロナ禍の影響を鑑みて外出先での通話には今回挑戦していないが、Aeropex同様雑音が多い環境下でのクリアな通話は結構条件を選んでしまうと思われる。
しかしながら現在流行(?)となっている自宅などでのテレワークに使用するには申し分なく、OpenMoveの性能を存分に発揮できるシチュエーションと言える。
筋トレ・サイクリング・ウォーキングでの使用にも問題無し。安価な分気負わずに使い倒せる
骨伝導ヘッドホンの真骨頂である「ながら聴き」が最高に活かせるシチュエーション、それこそが筋トレやサイクリング・ウォーキングなどの運動しながらの使用。
しかも骨伝導ヘッドホンは耳を塞がない構造上、道交法で問題となる「自転車に乗りながらのイヤホン使用」などの問題もある程度クリアーしているため、当然適切な周囲環境への配慮や注意は求められるが、そうした用途についても安心して使用できる。
運動中の脱落などについても、OpenMoveのバンド部分は上位モデル同様のチタニウムフレームのためしっかりと頭部をホールドしてくれるため、多少激しい運動でもズレる心配はほぼ無し。
また防水性能も上位モデルのIP67には劣るとは言えIP55という十分な性能を持つため、多少汗だくになった程度で故障するほどヤワではない。ただ衛生上、使用後はしっかりと拭き掃除推奨。
ただOpenMoveに限らずこうした形状の骨伝導ヘッドホンは、どうしても眼鏡の弦やマスクの紐などと多少ではあるが干渉するため、人によっては「かけ辛い」「面倒」と感じる場面も出てくるかもしれない。
私の場合は眼鏡の使用については慣れもあってか気になるほどでは無いが、最近のコロナ禍の影響でほぼ毎日かけるようになったマスクの紐が、ヘッドホンのバンドと干渉して耳にかけ辛いといったことがちょくちょくあったりする。
現在の日々のマスク着用は一過性のものなのでそのうちこれはデメリットではなくなるが、こればかりはどう感じるかは人それぞれ。
かなり親切になったイコライザー切り替え
OpenMoveには3種類のイコライザーモードがあり、音楽再生中にふたつの音量ボタンを3秒同時押しすることで切り替えることが可能。
スタンダードモード | 通常の音楽を聴くのに適した、標準的なモード
用途:室内や室外での、通常の音楽鑑賞 |
ボーカルモード | 高音・低音を押さえ人の声を聞きやすくしたモード
用途:音楽でのボーカル強調や、テレワークでの会議など |
イヤープラグモード | 付属のイヤープラグを使った状態で聴くのに適したモード
用途・イヤープラグ(耳栓)を使い、音楽鑑賞に集中したい場合 |
イコライザーの切り替え自体はAeropexなどこれまでの機種にもあったが、OpenMove以前の機種はお世辞にもこのイコライザー機能が充実しているとは言えず、「効果が分かりにくい」「今どのモードなのか分からない」といった結構実用上問題がある弊害があったりする。
が、OpenMoveはこれらの問題をものの見事に解決している。
まず第一に、用途が明確。これら3つのモードの用途がしっかり説明されており、効果もはっきりと体感できるほど明確。
第二に、今どのモードなのか音声案内がある。これが最高に素晴らしい。モード切替時に現在のモードを音声で案内してくれるため、今どのモードなのか容易に把握できる。むしろこれまでの機種ができなかったのが信じられないぐらいだ……
上位モデル類とのイコライザーモードに関しては、完全にOpenMoveに軍配が上がる。勝負になってないと言っても良いぐらいに利便性が格段に向上している……と言うかこれまでの機種のイコライザーモードが駄目過ぎると痛感するぐらいに進化している。
上位モデルのAeropexと実機比較
最後に上位モデルのAeropexと実機の差がどの程度あるかを比較してみる。
左がOpenMove、右がAeropex。Aeropexは通勤に週末サイクリングに、ほぼ毎日使い倒している。
ユニット部分比較。OpenMoveの方が明らかに大型で、横長にスマートな形状。実はこの形状がちょっぴり曲者で、耳にかかる部分にまでユニットが伸びているせいで、音量ボタンが耳の裏にわずかに被る位置になってしまい、ちょっとボタンが押しにくく感じる場面があったりする。
これは耳の大きさや形状にも左右されるので個人差があるだろうが、個人的に感じるOpenMoveのわずかなマイナスポイントのひとつ。
アクチュエーター部もOpenMoveの方が大きい。また質感としては実際に肌に触れる部分の素材は同様だが、表側の素材はAeropexはシリコン製なのに対しOpenMoveはプラ製なので、触れた感じは若干チープ。
しかしデザインと一体化したマルチボタンは非常にスタイリッシュかつ押しやすく、この点においては上位モデルのAeropexよりも優れていると感じる。
マルチボタンひとつで音楽の再生・停止や曲送り・曲戻し、電話の応答などあらゆる操作を行うため、押しやすさは非常に重要。
Aeropexのボタンも決して押しにくいわけでは無いが、しっかりとしたクリック感のあるOpenMoveの方がどうしても操作しやすい(というか確実に操作できてる)感が強い。
総評:AfterShokz初のエントリーモデルとして、相応しい実力。骨伝導ヘッドホンの入門機に最適
上位モデルとさして遜色ない性能を誇りながら価格が1万円を切るという、AfterShokz初の脅威のエントリーモデル「OpenMove」。その長所・短所を改めてまとめてみた。
- 1万円を切る(実売9千円台)、非常に求めやすい価格帯
- エントリーモデルながら上位モデルと同様のチップを搭載し、同等の音質性能を誇る
- マルチボタンのデザインや押しやすさが向上
- イコライザーモードが上位モデルを凌ぐほどに進化
- 充電端子が汎用性に優れたUSB-Cとなった
- 耳を塞がないデザインのため、サイクリングなどでも安全に使用できる(一定の配慮や注意は必要)
- バッテリー駆動時間が6時間と、上位モデルの8時間から2時間短くなっている
- 防水規格が完全防塵&30分の水没性能のIP67からIP55にダウン
- 音量ボタンがわずかに耳裏に隠れてしまい押しにくい
- ユニット部分がプラスチック製のため、触れた感触がチープ
OpenMove最大の特徴は、何と言っても上位モデル同様の音質ながら1万円を切る価格帯であるという点。これは「初めて本格的な骨伝導ヘッドホン導入を考えている」という人に対して大きなアピールポイントになる。
対してデメリット部分は約3gの重量増やバッテリー時間の短縮、防水性能のランクダウンなど小さいものが幾つかあるが、これらは用途次第で無視できるものも多いため、スペック上は劣っていても実用上で上位モデルに劣っているとは一概に言えない。
Bluetooth5.0 IP55防水設計 連続再生時間:6時間 重量:29g
保証期間:2年間長期保証(※要代理店登録)
非常に優れた骨伝導ヘッドホンを世に送り出してきたAfterShokzにわずかに存在した欠点のひとつが、高品質に裏付けされた価格の高さだったため、どうしても「骨伝導ヘッドホンに本気な人」しか手にしなかったことだが、実売9千円台の入門機的位置づけのOpenMoveは見事にその欠点を埋める役割を果たしている。
カラー展開も「スレートグレー」「アルパインホワイト」「エレベーションブルー」「ヒマラヤンピンク」の4種類が展開され、好みのカラーをチョイスできるようになっている(現在は「スレートグレー」「アルパインホワイト」の2色で、今後随時展開予定とのこと)。
もし骨伝導ヘッドホンの導入を考えているなら、まずはAeropexなどの1万円後半の高価な上位モデルからではなく、それら上位モデルと同等の音質を持ちながら半額以下で購入可能なOpenMoveは非常にお薦めできる選択肢に入る。
最近はAfterShokz公式ストアやネット通販以外でも、AfterShokz製品を店頭で取り扱う店舗が非常に多くなってきたので、気になったのならばまずは店頭での試聴を是非お薦めしたいところ。
最近はワイヤレスヘッドホンがかなり主流になりつつあるので、骨伝導ヘッドホンもそれに合わせてもっともっと人気が出て欲しい……そうすれば需要と供給のバランスからもっと価格が下がる可能性も(笑)