SONY インナーイヤーレシーバー「MDR-EX650」レビュー
2 月末日に購入したソニーのインナーイヤーレシーバー「MDR-EX650」だが、使用し始めて約 2 ヶ月近くが経過したので、そろそろ使用感・音質面でのレビューを試みてみようかと。ちなみに使用機材は iriver の iFP799。
知る人ぞ知るメモリ型携帯プレーヤー黎明期の逸品、つまり現在ではもはや骨董品の iFP799。容量 1GB の低容量にも関わらず当時約 7 万円もしたこともありなかなか手放せず、その上最近ではほぼお目にかからなくなった単 3 電池駆動式のため、実は未だに結構重宝する面もちらほらと。駆動時間約 40 時間という長時間駆動可能というのも魅力点。
そんなこんなで最近よく聞くハイレゾなどとは一切無縁の携帯プレーヤーだが、長年親しんできた愛機ということで、主にコレでの試聴をメインとしたレビューとなる。
ちなみに試聴したのはもっぱらアニソンやゲームソング、たまにサウンドトラック系や一般曲。どちらかと言えば女性ボーカル多めなので、ある意味クリアな中高音域をポイントとするこの MDR-EX650 の最適な曲目構成だったかも。
それでは早速レビュー開始。
真鍮製ボディが奏でる中・高音域は非常に高い解像度
比較対象は主にこれまで使用してきた MDR-EX310SL 及び購入時に比較試聴した MDR-450EX となるが、その双方と比較しても中高音域の音質は確かに良く感じた。
ここでいう「良い」は鳴っている音の細部をどこまで感じられるか、つまり「分解能が高い」という意味。さして音質の知識も聞き分けもできない自分でも、明確に「違う」と感じられる程度には高い解像度だった。
MDR-EX650 試聴後に EX310SL 及び MDR-EX450 で同じ曲を試聴してみると、曲全体がボワつくとまではいかないけれど、何か極薄の半透明の幕が掛かったようなイメージがあった。
それはそれで好みの問題でもあるので決して悪いわけではないようだったが、中高音域にマイルドさではなくシャープネスを求めるのなら、断然 MDR-EX650 だった。
逆に突き刺さるような高音域は聴き疲れするという人には、MDR-EX450 の方があるいは好みな音作りをしているのかもしれない。ここら辺にハウジング素材の違い(MDR-EX450 はアルミ、MDR-EX650 は真鍮)があるのかもしれない。
低音域の解像度にも不満はなし。だが目を見張る程の特徴もなし
低音域に関しては特に特筆する点は少なく、可もなく不可もなく及第点。旧型の EX310SL、そして下位グレードの MDR-EX450 と比較しても、素材の違いによる若干の音作りの差違以外に目立った部分はないと感じた。
まぁこれは試聴した曲目に低音重視の曲が少なかったのも原因かもしれないし、私自身あまり低音重視の音作りが好みではないこともある結果なので、あまり参考にはならないかも。
ちなみにソニーのイヤホンには低音重視の EXTRA BASS シリーズがあり、そちらもいくつか試聴はしたが、不必要に強調された低音がすごくボワついて個人的には全く受け付けられなかった。
低音重視系のイヤホンはロック等の曲には合うのだろうが、中高音域メインの女性ボーカル主体の曲とは相容れないのかもしれない……
ただ前述のように、MDR-EX450 とでは素材の違いから来る低音域の響きは若干ではあるが確かに違いはあるので、低音に拘るようなら要試聴比較した方がいいと思う。
真鍮製の本体の高級感・重厚感は抜群
本体は真鍮製ということで、金属の質感は非常に高級感があり、また大きさの割にしっかりとした重みもあるので、樹脂&ゴム素材だった EX310SL とは一線を画しており造りには安っぽさは全くない。
これは下位グレードの MDR-EX450 も同様で、MDR-EX450 の方はカラーバリエーションも豊富なので、見た目重視の人なら MDR-EX450 チョイスの方がファッション的な側面では合わせやすいかと。
後、何気に気に入ったのがケーブルの表面処理。絡みにくいというセレーションコードを採用しているが、これが本当に絡みにくくて取り回しが非常に便利になった。
というのも普段の運用が通勤時使用で、使用しない時はプレーヤー本体にケーブルを巻き付けて上着ポケットに放り込んでいるため、EX310SL では複雑に絡み合って解くのにひと苦労したこともしばしばだったが、MDR-EX650 ではこれまで使用してきた間にはそれが一切無し。
個人的にケーブルに関してはかなり高評価のポイント。
装着感は可も不可もない、インナーイヤーの平均的なフィット感。しかし……
インナーイヤーは物理的に「耳に合わない」ということもちらほら聞くが、少なくともこれまで使用してきたインナーイヤホンはどれも問題なく耳に収まり、当然この MDR-EX650 も何の問題もなくフィットした。普通に歩いている限りでは脱落の心配はない程度にはフィットしてくれている。
……が、唯一の難点として、金属製ということで冬場は 凄く冷たい。
付けていればすぐに体温で冷たさは消えるが、正直気温によっては耳に堪える(笑)
総評:同価格帯のイヤホンでは高級感が頭ひとつ上。中・高音域重視なら特にお薦め
結局は個人の音の好みにも左右される部分が強いが、実売 8,000 円前後の価格に見合う性能かどうかはさておいて、下手な音作りのない素直に高解像度な音質を提供するイヤホンとしてお薦めできる製品だと感じる。
MDR-EX650 のセールスポイントは「真鍮ハウジングによるクリアな中高音域」と「新型ドライバーユニットによる高感度」のため、中高音域のシャープネスな音質が好みに合うのなら、よほど極端なレベルでない限りどんなジャンルにもひと通りには対応する、オールマイティな優等生仕様になっているかと。
実はこのイヤホンの他にも、ほぼ同価格帯としてネット上でも非常に有名な Shure の「SE215 Special Edition」やオーディオテクニカの「ATH-IM01」あたりのケーブル着脱式系のイヤホンも試聴してみたが、結局は昔から聞き慣れたソニーの音質を選択することになった。
イヤホンに関しては学生の頃から常にソニー一択だったので、次の機会には他メーカーのものを揃えて聞き比べでもしてみたいかと。そうすればもう少しレビューの汎用性も正確性も増すかもしれないし……
しかし他はどうであれ、MDR-EX650 自体は音質面では十分満足の行く、使い勝手も優れた良質のイヤホンには違いないので、もしイヤホン選定迷っているのならお薦めできる製品だと思う。